福来博士と青年僧の講演行脚
どんな伝承か
明治四十四年に大学を出て別所へ帰住していた半田孝海は、東大を辞した恩師福来友吉を慰めようと、温泉のあるこの土地へ一週間ほどの予定で招いた。博士の来訪は田舎の大きな出来事となり、近在の村々から講演を望まれて、半田が前座を務めながら小学校や集会所を回り、合わせて七回ほど講演した。福来は毎回判で押したように透視と念写の話をした。最後の別所温泉の集会所での講演では、連日の行脚に疲れて青ざめていたのに、壇上に立つと紅潮して潑剌と語り、精神力は肉体的条件を克服できるものだと語り合ったという。
原典より
そういうわけで重い腰をおされるようにしてつれだされた福来さんであったが、壇上に立つと、はじめは本当に疲れて青ざめた顔であったのに、それがじきに紅潮してきて、きわめて元気な潑刺たる様子で話をすすめた。—— 霊の世界 ― 小品集(田中千代松・心霊研究文庫III・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊の世界 ― 小品集(田中千代松・心霊研究文庫III・1978年(昭和53年))
『霊の世界――小品集』は、田中千代松が新聞・雑誌に寄せた心霊研究の随筆や小論に手を加えて集めた心霊研究文庫の第三冊で、はしがきは一九七八年十一月の日付である。SPRの成り立ちや催眠術・超心理学の来歴、クルックスやフラマリオンを論じる文章のほか、土井晩翠・河上肇・福来友吉の挿話、平田篤胤が記した仙童寅吉、秋山真之の霊夢などを収める。「エッセイ種々」「群像」「ものがたり回顧」の三部に分け、多くの篇に初出の誌名と年月を添える。