厄年の子を捨てて拾わせるしきたり
どんな伝承か
長崎県北松浦郡の主婦山川秋子は、母が三十三の厄年に母の実家で生んだ子だったため、祖母の家のしきたりで一度捨てられたという。前もって子のない叔父夫婦と話をつけておき、生まれて間もない赤子をおくるみに包んで道端に置くと、待ち構えていた叔父夫婦が拾い上げて静子と名づけ、親類知人を招いて祝宴を開いた。その後で生みの親が仲人を立てて引き取りに行った。以来、彼女は拾い親の付けた静子の名で呼ばれ、本名で呼ばれると戸惑うほどだった。年老いた母が寝ついて里帰りすると、母は今も彼女をシイちゃんと呼んで離さなかったと、新聞の投稿欄につづっている。
原典より
生まれてまもないわたしをおくるみに包んで道端に捨てると、先方はちゃんと待機して拾ったそうで、静子と命名し、親類知人を招いて祝宴をはったとか。—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。