中風よけの初炉入りに殺到
どんな伝承か
火葬場の釜に入ると中風にならないという俗信があり、下関市に新しい火葬場が完成した折には、大勢の老人が人焼釜の前で順番を争った。同じ騒ぎは宇部に近い小野田市でも起きている。市の火葬場が新築されると、火入れの何日も前から「まだ釜はくぐれないのか」「中風に効くなら高血圧にも効かないか」といった問い合わせが、宇部や小郡のあたりからまで管理人のもとへ寄せられた。あまりに希望者が多いため、市は予定より早く初炉入りを願い出て許しを得、初日だけで一二〇数人、翌日も八〇人が釜をくぐったという。最も若い者は二〇歳、最年長は九二歳で、その大半は労働者だったと記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。