立木観音の御利益
どんな伝承か
塔寺の立木観音堂に下がる鰐口には珍しい言い伝えがある。むかし大沼郡西方村の名入に住む五十嵐吉兵衛は信心深く、とりわけ立木観音を厚く信仰していた。ある年伊勢参りに出かけ、桑名の渡しで船に乗ったところ、途中で船が動かなくなった。船頭が客の持ち物を水に投げて試すと、吉兵衛の手拭いだけが沈んでいったので、鰐に見込まれたとして海に入るよう迫られた。進退きわまった吉兵衛が立木観音の姿を思い浮かべて一心に祈念すると、船はするすると動き出した。無事に参宮を果たして帰った吉兵衛は、御利益に感激して鰐口を奉納したという。
原典より
塔寺の立木観音堂に下っている鰐口について、珍らしい伝説がある。—— 会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。