化粧清水で美女に化ける古狐
どんな伝承か
樋渡部落の西方五百メートルばかり離れた所に、粧坂という地字がある。けはい坂がなまってけしょうさかとなったもので、なだらかな坂を下りた所に出沼川という川幅二メートルほどの小川が流れている。けはい坂の中ほどには直径一メートルほどの化粧清水があり、狐がここで顔をつるりと撫でるとたちまち美女に変じて、道行く人をたぶらかしたという。相当の古狐で、まぶしい真昼にも、旧坂下町の麹商人が清水のそばで麹を一升枡で数えながら狐に取られていたことがある。出沼川を渡った稲荷壇では、厩肥を運んで来た男が見せ物に見入る錯覚に陥り、馬の尻を覗いていたという。耕地整理の後、清水のあった場所も粧坂の字名も失われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。