真綿を広げて猟師を困らせた男
どんな伝承か
丸山岩太郎という少し目の不自由な人物がいた。気楽な性格でいたずら好きであり、ある日、西牛沢へ真綿を取りに行った帰り道に鉄砲打ちの猟師と出会った。腰に何の獲物もないのを見てからかいたくなり、こんながらくた鉄砲でこの真綿が貫けるか試しに撃ってみろ、撃たなければここは通さぬと言って、両手で真綿を胸いっぱいに広げた。猟師は撃てば岩太郎の命が危ういと困り果て、通りかかった平内も狙いをつけたが撃てない。押し問答のうちに日が暮れ、夜になれば岩太郎の目が見えないのを見抜いた二人は抜き足で逃げ、岩太郎は真綿を広げたまま朝まで立っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。