線香を焚いてから開ける一月七日の戸
どんな伝承か
笠岡市の丸岩では、一月七日の朝は妻戸をわずかに開けて線香を焚き、それから戸を開け放った。同じ市内の豊浦でも、戸を開ける前に線香を焚いたり青松葉をいぶして煙の臭いを立て、厄神を追い払ってから戸を開けたという。著者は、これを厄神が去った翌朝の所作とみて、門口やムラ境に呪物を置いて侵入を防ぐ防御型の呪術と同じ系列に位置づけている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。