生木の煙で千両箱を投げる貧乏神
どんな伝承か
新潟県中頸城郡吉川町(現・上越市吉川区)では、正月二日の伐り初めにミヅクサ・ヌルデを伐ってきた。土地には次の笑話が伝わる。貧乏な親父が焚き物に困り、山から伐ってきた生木を燃やしていると、天井にいた貧乏神が煙いからそんなものを燃やすなという。何が嫌いかと問われて金に困っていると答えると、貧乏神は千両箱をぶつけるぞといい、いぶすたびに千両箱を持って来て投げてよこしたので、親父はどんどんいぶして帰してやったという。そこで一月十五日には伐ってきたヌルデをいぶして粥を煮る。当地では同じ日にヌルデの呪物を門口に置く風習もある。
原典より
いぶすと、かえって千両箱を持って来て投げてよこす。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。