アッツの山崎大佐が率いた無言の凱旋
どんな伝承か
新潟県高田市の東部第六十七部隊での話。昭和十七年だったと思う。語り手は第二大隊第七中隊付の見習い士官であった。ある日、将校集会所の中食時に週番司令と連隊副官の阿部万治大尉が何か話し合っていた。先日の夜間、アッツ島に行っている山崎大佐が馬に乗って抜刀し、部隊を指揮して連隊の衛門へ向かって帰って来た。歩哨が気付いて衛兵司令に連絡し、衛兵司令は百メートルほど先に将校の指揮する部隊を見て衛兵整列と号令した。部隊は衛門に入り、ラッパ兵は皇御国のラッパを吹いた。だが駆けつけた週番司令には部隊など見えなかった。この事は口止めとなり四十四年間消えていたが、数日後に山崎大佐の二階級特進が発表されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。