黒雲に魂を抜かれ雁木柱で死んだ老婆
どんな伝承か
語り手が子どものころ、高田市に入った旧諏訪村東中島の家の隣に、東光寺という大きな寺があった。近くに、寺参りもせず人にあこぎな仕打ちばかりする老婆がいた。ある日にわかに空が黒雲に覆われ、今日こそ冥土へ連れていくという声が響いた。老婆は仰天して雁木の柱にしがみついたが、魂は抜き取られてしまった。ちょうど寺役の帰りに千原田のあたりを歩いていた東光寺の住職は、頭上の黒雲から助けてくれと自分を呼ぶ声を聞き、数珠をしごいて念仏を唱えた。雲は晴れ、数珠は煙で焦げていた。後で聞くと、横曾根の老婆が柱につかまったまま死んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。