二月九日のオカタボンダシ
どんな伝承か
陸中下閉伊郡には、二月九日を女房を追い出す日と称してオカタボンダシと呼ぶ土地があった。もともとは農繁期を前に嫁を親元へ遊びにやる日だが、土地には笑い話めいた由来も語られている。昔はこの日でなければ女房を出すことができず、この日に出された者はどう詫びても許されなかった。だから妻が欲しければ、その晩に十文字すなわち道の辻に立っていればいくらでも見つかったのだ、という。著者は、この晩げと道の辻こそが厄神の現れる時刻と場所を示すと読む。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に著した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と各地の採訪記録の事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、五章は書き下ろしで、章ごとに注を付す。