淵の女が試した正直と欲
どんな伝承か
正直な爺が淵の岸で木を伐っていて、手が滑って鉈を淵へ落とした。探しに入ろうとすると、淵の中から美しい女が黄金の鉈を持って現れ、落としたのはこれかと差し出した。爺はもったいない、自分のは錆びた古鉈だと答えたので、女は古鉈を取って戻り、正直だからと黄金の鉈も添えて渡した。爺の家は長者となった。それを聞いた上の家の婆は、怠け者の爺を叱って同じ淵へ行かせた。爺はわざと鉈を投げ込み、現れた女の手から黄金の鉈を奪おうとしたので、女はその鉈で頭を斬り割り、爺の家はいっそう貧しくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。