梁場で刀の疵を言い当てた声
どんな伝承か
タラギの右源太という人が、下岩泉の下のカゲに鱒梁をかけ、毎夜見回りに出ていた。ある夜、ソウジボナイという沢の方から行燈に似た光り物が現れ、一間ばかり先をゆらゆらと飛んで足元を照らし、梁場へ下りる道に入ると速まって消えた。次の晩から先祖伝来の銘刀を差して行くと、夜更けに向かいの山からホイホイと呼ぶ声がし、やがて、銘はあるにはあるが手の内三寸に疵があると三度叫んだ。帰って刀を検めると、鍔際三寸ほどの所に刃こぼれがあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。