稲を刈ってくれたのっぺらぼうの天狗
どんな伝承か
川平のがっとうから十二沢へ向かう川べりの森には、天狗がまつられている。昔、親沢の人がその近くの田へ稲刈りに行き、遅くなったので夜も刈ろうと、あぜで焼きもちを食べかけたところ、手ぬぐいを姉さんかぶりにした娘が手伝いに来た。娘は、西うちの玉ねえはこんな顔かと言って手ぬぐいを取ると、目も鼻もないのっぺらぼうだった。違うと叫ぶと、今度は鼻が五寸も高い真っ赤な顔に変わり、その人は鎌も背負子も放り出して逃げ帰った。翌日行ってみると稲はきれいに刈られ、焼きもちを包んだふろしきが森の木の枝に旗のようにはためいていた。それでこの森に天狗をまつったという。
原典より
明日になって行ってみると、稲はきれいに刈ってあって、焼きもちを包んでいったふろしきが、森の木の枝にひっかかって、旗のようにひらひらしていたそうだ。—— 南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。