狐っ火(狐火)
どんな伝承か
向原とその周辺では狐っ火の話が多く語られる。役場からの帰りが遅くなった老人は、暗い中を行くと蓮池のそばに狐っ火が出たのを実際に見たという。小明見の金光さんからダイジンさんまでの道では、丸い提燈のような火が一つから十にも二十にも連なり、ざわざわと大勢が口をきいているように聞こえた。狐っ火が見えるときは狐が自分の足元に来ているのだとも言った。夜十一時ごろ電車で暮地へ行き、山の裾野でピコンピコンと明かりを見た者もいる。高座山の尾根の上を火の玉が飛ぶのを見た者もあり、大明見との境の山では狐っ火が順々に並んで通ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告)
『向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異』は、民俗調査報告の第九号・第十号にあたる向原の民俗誌の上巻から、「IX 口承文芸」の章を収めたものである。昭和五十六年から五十七年にかけて向原の話者から聞き書きした昔話十一話、伝説二十四話、天狗や狐、河童、ヒトダマをめぐる世間話二十七話のほか、富士山にまつわる諺と方言を収める。各節の初めに題名・分類・話者の生年・採集日を記した分類表を置き、話は土地の言葉のまま書き起こして話者名を添える。