神奈川内郷村・辻の竹ぐし
どんな伝承か
柳田国男は、かつての葬式行事のなかで「辻」に十数本のくしをさす行為に注目した。長さ七、八寸の竹のくしに白い紙をさしはさんだものを村の辻にさしておくと、村人たちはそれで葬式があったことを知る。つまり葬式の表示でもある。柳田はこれを、神奈川県の内郷村(津久井郡)でたまたま葬式があった折に、村の辻に十数本の竹ぐしがさされているのを実見して報告している。幽霊が頭に三角形の紙をつけてあらわれる姿と、辻に立てるこの竹ぐしとは同じものではないかという。辻はあの世とこの世の境にあたる場所とされ、死者の霊が戻ってきて直接もとの家に戻り祟ることのないよう、目印を立ててそこに寄りつかせるためだと考えられたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。