夜更けの広尾ヶ原に流れる送り囃子
どんな伝承か
麻布七不思議の七つめは広尾ヶ原の送り囃子である。広尾という原っぱを夜更けに通ると、どこからともなく囃子の音が流れてくるという。本所の馬鹿囃子と同じく、なぜ鳴るのかはわからぬまま語り伝えられてきた。麻布の高台から低い台地へ移る、ちょうど中間にあたる場所であり、境目の土地に怪音の話が伝わるという点で本所と共通している。明治三十年代ごろまでは、こうした七不思議を人々は本当のことと思っていたらしい。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。