井戸に落ち翌年同日に頓死した倅
どんな伝承か
江戸の大久保のあたりに住む大御番組の同心、石山某の息子が、これといった訳もなく深い井戸に落ちた。山の手の井戸なのでたいそう深く、引き上げても命は危ういと思われたが、どうにか助け上げると怪我ひとつなく、ふだんと変わらない様子だった。ところが不思議なことに、翌年の同じ日の同じ時刻に、息子は急に死んでしまったという。根岸守信が「前兆奇怪の事」として書き留めた話で、小泉丹は、偶然の一致の中でも特に際立った例として興味深いと評している。
原典より
不思議なるは、翌年其日の時日もたがへず、頓死なしけるとなり。—— 科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。