扇木平のうわばみの角
どんな伝承か
昔、蓬田岳の扇木平にうわばみが棲んでいた。雌の蛇で、月に二度、東堂山の裏山を抜けて日影山の裾を巡り、早渡の越前が渕へ水浴びに通っていた。ある日腹が痛んで渕へ行っても治らず、帰りに東堂山の観音に尋ねると、雌の仔鹿を呑んだからだと諭され、日影の沢の水たまりに浸かるよう教えられた。それ以来うわばみは姿を見せなくなった。そのころ鴇子のきっちいむという鉄砲の名人が扇木平へ鹿打ちに行き、洞穴から乗り出したうわばみの喉を撃った。きっちいむは息を吹きかけられたと言って寝つき、間もなく死んだ。翌春、仲間が沢へ行くと白骨のうわばみに二本の角が生えていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
小野町史 民俗編――伝説(小野町(編)・小野町史)
『小野町史 民俗編――伝説』は、小野町が編んだ町史の民俗編から、第九章「ことばと伝承」の第一節「伝説」を収めたものである。田村郡小野庄にあたる町内の館主や城主の没落、坂上田村麻呂や八幡太郎、小野篁・小野小町にまつわる話、デンスケ坊の祟り、河童の恩返し、大蛇や名石・埋宝の話など五十四編を、大半は地元の人からの聞き書きで収める。村川友彦の「はじめに」と地域の特色の解説を置き、伝説を大字(旧村)ごとに並べ、語り手の名を添える。