遍路が汚れ物を洗って止まった湯の神の湯
どんな伝承か
財田上の大久保谷には湯の神の社があり、湯の谷という地名も残る。湯の神の恵みで湯が湧くのだと、村人は大切に使っていた。ある日、子供連れのお遍路が社に立ち寄り、かまどを作って麦飯を炊いて食べ始めた。あいにく子供は腹を下していて着物を汚し、お遍路はその着物を、社の中に湧き出る湯で洗い始めた。すると岩が崩れるような不気味な音がして、流れていた湯が止まってしまった。驚いたお遍路は村人に詫び、掃除をし、夜明けまで祈禱を続けたが、湯はとうとう出なくなってしまったという。
原典より
法師原から鋳物師原へ越える坂道の右側に湯の谷がある。—— 新編香川叢書 民俗篇――昔話と伝説(香川県(編)・新編香川叢書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新編香川叢書 民俗篇――昔話と伝説(香川県(編)・新編香川叢書)
『新編香川叢書 民俗篇――昔話と伝説』は、香川県の叢書の民俗篇のうち、第八編「口承文芸」を収めた部分である。香川県内の昔話と伝説を扱い、昭和初年からの採集の歩み、呼び名や発端・結末の句、桶屋やほうろく売り・遍路などの運び手、語り手の横顔を論じたうえで、綾上町などで聞いた未発表の昔話を話者名付きで掲げる。伝説の章は樹木・石と岩・水と池と渕・塚と穴・祠と堂・坂と山と峠と谷・動物の項目に分け、各話の末尾に伝承地の郡町名を添える。