トコロを包んで渡す檜原村の頭屋渡し
どんな伝承か
『新編武蔵風土記稿』多摩郡檜原村条によれば、檜原村では祭事にあたって、氏子の中から二人ずつ番を分けて当たった。その次第に従い、番に当たった者が酒を酌んで次の人にすすめ、酒肴として紙に草藤(トコロ)を包んですすめた。これを変約なきの証としたという。文中の「草藤」とはトコロのことで、これを渡して頭屋渡しのしるしとしたのである。トコロが神饌に不可欠のものという意識があったためで、ここでは頭屋渡しをトコロ渡しと呼んでいた。得がたくなったトコロを探し求めるのも、当番の重大な任務として後年まで課せられていたという。関東では珍しい例である。
原典より
えがたくなったトコロを探し求めるのも、当番に当たった者の重大な任務として後年まで課せられていたという。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。