峠を塞ぐ狼に火を借りた木原家の先祖
どんな伝承か
東京都西多摩郡檜原村の上の山で、皆で炭を焼いていたときのこと。峠の途中に狼が現れてどっしりと座り込み、先へ進めなくなってしまった。後から来た炭焼きたちも動けずに、三十人ほどが一か所に固まってしまったという。そこへ茗荷平の木原家の先祖が来て、「どれどれ、道を開けてくれ、何がいるんだ」と言いながら、キセルにたばこを詰めつつ狼のところまで歩み寄り、「ちょっと火を貸してくんな」と声をかけた。すると狼はぽっと飛びのいて、それからは全く姿を見せなくなったという。田倉倉太郎の祖父・才一から聞いた話だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。