祖父の骨を樹に縛りつけた村
どんな伝承か
著者の近所に住むT君が、郷里である山形県北村山郡大久保村の葬りについて語ったことがある。三十年ほど前、T君がまだ子供だった頃に祖父が亡くなり、そのとき火葬にした骨を菰に包んで両端を縄で縛り、墓地の樹にくくりつけておいたというのである。いつまでそのままにしておいたかは覚えていないが、確かにそうしたと言う。あまり耳にしない風なので、著者はいつか確かめてみたいと思い、のちに村山地方を歩くことになった。骨掛けと呼ばれるこの習俗は、村山平野の周辺に点々と残っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。