厩の馬に添うて死んだ娘
どんな伝承か
東北のオシラ神には、馬と女との交婚の怪話が伴う。山形県北村山郡東郷村の農家に一人娘がいた。父は馬車ひきを家業として終日家を留守にして稼ぎ、娘はまま母にいじめられて、昼は野山に、夜は厩の芦毛の馬のそばで寝ていた。ある夜、その馬の首にしがみついたまま、馬と娘が死んでいたという。岩手県紫波郡志和村では、白馬が家に駆け込んで一人娘をさらい、馬と娘は大滝の淵に入ったと伝える。もとは馬と人との間に不気味なつながりがあると見られ、馬を酷使する者は馬から受ける祟りを避けられぬとされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。