河童に通われて子を産んだ娘
どんな伝承か
北奥南部の大湊村の荒川に、由緒ある母娘が住んでいた。娘にはひそかに言い交わした男がおり、毎夜のように娘のもとに通ってくるという噂があったが、その男は人間ではなく、荒川に棲む河童だということであった。娘を責めてはみたものの、そのころにはもう噂の主の胤を宿していた。月満ちて娘から生まれたのは見るも恐ろしい形相の怪児だったので、娘は世間を恥じて、人目につかぬうちにその子を殺し、自らも自殺して果てた。母親も重なる不幸を悲しんで泣いてばかり暮らしていたが、これも娘のあとを追ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。