難産の末に生まれた河童の子
どんな伝承か
岩手の二戸に、人間が河童の子を身ごもったという話がある。あるとき山仕事をしていた寅という男の妻が産気づき、産婆が呼ばれた。行ってみるとなかなかの難産で容易に生まれず、無理に産ませたところ河童の子であった。この土地では河童をメドッといい、頭の上に袋があって、それを破ると水が一升ほど出た。手と足の指はそれぞれ六本ずつで、鼻の穴は一つしかなかった。寅の妻は毎日山仕事の帰りに必ず川へ行くので、村人が怪しんでついて行くと、どぶんという水音がしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。