四谷の空き屋敷で鳴った狐の神かぐら
どんな伝承か
江戸では狸ばやしと並んで狐ばやしも知られていた。四谷で空き屋敷の番をしていた五郎蔵は、初午の日、妻子が実家へ帰って留守のあいだに用事で外へ出た。戻ってみると屋敷の中がにぎやかで、大勢が手拍子や足拍子を打ちながら歌い踊っている気配がする。近所の者が初午参りの帰りに宴を開いているのだろうと思い、声のするほうへ行ったが、屋敷じゅうを探しても人影ひとつ見つからない。肝の据わった男だったので怖がりもせず寝てしまい、明け方に目を覚ますと物音は消えていた。これを狐の神かぐらというのだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
呪術と占いの日本史(渋谷申博・瓜生中・呪術・占い史・1992年(平成4年))
『呪術と占いの日本史』は、渋谷申博・瓜生中が平成四年に著した日本呪術史の概説書である。縄文の屈葬や土偶、卑弥呼の鬼道から中世の呪詛、近世のおかげ参りと「ええじゃないか」を経て、明治の神仏分離と修験・祈禱の禁止までを、記紀や史書の記事と民俗の断片から拾い上げる。古代・中世二章・近世の四章を小項目に分けて立て、表の歴史に現れない民間信仰を「闇」の系譜としてたどる。