杵が火柱となった大戸の不動尊
どんな伝承か
上大戸の松井家の裏に、延宝元年に建てられた石の不動尊がある。昔、正月間近の冬の日、戦に敗れた武士がこの家に一夜の宿を借り、翌朝、礼に小さな木彫りの不動尊を置いて、追っ手が来ても行き先は言わないでくれと頼んで去った。ほどなく追っ手が来て厳しく問いただすので、主人は餅をついていた杵の先でそちらを指した。すると杵はたちまち火柱となり、木の不動尊も灰になった。以来、正月のたびに不幸が続いて家は傾いた。ある夜、夢に不動尊が現れ、不動の心を持てば許すと告げた。主人は心を改め、変わらぬ意志を石に託して石の不動尊を建て祈り続けると、家は再び栄えたという。
原典より
このことがあってからというものは、毎年正月前後には不幸が続き、栄えてきた松井家も、いつしか生活にも困るようになった。—— 田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説(田沼町(編)・田沼町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説(田沼町(編)・田沼町史)
『田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説』は、田沼町が編んだ町史第一巻のうち、伝説の節の大半とことわざの節の冒頭を収めたものである。僧や鎧の祟り、神社の霊験、佐野宗綱の出陣、藤原秀郷ゆかりの井戸、義民、地名の由来、落人、寺社の縁起など、町内各地に伝わる話を地名や家名とともに記す。伝説は英雄偉人・義民・地名・落人・寺社縁起などの項に分けて並べ、ことわざの節は調査員の協力で集めたものを五十音順に掲げるが、いの項で終わっている。