鬼の手を払子で打ち払った海潮寺住職
どんな伝承か
真岡に、高利で金を貸し、死にかけた病人の枕元にまで取り立てに乗り込んでは、かぶっている布団まで持ち去る強欲な老婆がいた。米屋もしていて、買うときは見かけは一斗でも一斗二升入る升、売るときは八升しか入らない升を使い分けたので、人々から鬼ばばあと呼ばれていた。老婆が死んだ晩、海潮寺の住職が書見をしていると、冷たい風とともにえんま様の使いの鬼が現れ、あの老婆は地獄へまっすぐ連れて行くので明日の葬式で経を読むなと迫った。住職は、地獄に落ちる者を救うのが自分の勤めだと退けた。翌日、住職は丁寧に経を読み、葬列でも柩に寄り添った。途中で急に暗くなり、空から大きな手が伸びて柩をつかんだが、住職が払子で打ち払うと、悲鳴とともに火の車を引く鬼どもが黒雲に乗って去り、柩のそばには血まみれの鬼のつめが落ちていたという。
原典より
そうして、柩のそばには、鬼のつめらしいものが、血に染まって落ちていたと。—— 真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。