流されても戻る唐松観音
どんな伝承か
秦野の西地区に唐松観音と呼ばれる観音がある。三百年ほど昔、清左衛門という人が妻の安産を願って造らせたものだという。ある年の大雨で観音は押し流され、桜土手のほうまで運ばれてしまった。見つけた人が、頼朝が舟をつないだと伝わる松の根元へ安置したところ、いつのまにかもとの場所に戻っている。それが繰り返されるので、ここに祀られたいのだろうということになり、麦わら屋根の祠を建てて納めたという。毎月十九日を観音の命日とし、子授けや下の病に霊験があるとして信仰を集めてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪(秦野市(編)・秦野市史)
『秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪』は、神奈川県秦野市の市史のうち、民俗編の口承の部分を収めたものである。前半には市内で聞き取った動物・神仏・妖怪・人や村に関する話を地区名とともに載せ、河童やセンタク婆さん、グアン婆さんなどの妖怪譚を含む。後半の第四節「伝説」は一テーマ一話の方針で百話を採り、動物・植物、水、石・岩、山・坂・道・畑、塚、祠堂、家・村の七つに分け、既刊の類話を〔文献〕として要約して添える。