江戸へ手紙を運んだ城の白狐
どんな伝承か
米沢城の二の丸に白狐が住んでいた。享保八年の秋も深い頃、上杉宗憲の側室であるお久の方が、参勤交替で江戸にいる宗憲を思って狂おしいばかりであったとき、江戸の殿さまに手紙を書いて廊下に置いておけばきっと届くという夢を見た。信じて手紙を廊下に置くと人の足音がして手紙は消え、七日目に廊下でかすかな音がして出てみると、殿さまからの返書が一通あった。廊下には狐の足跡が点々と残っていた。この白狐は翌年、江戸表への使いに出た帰り、那須野が原で毒を塗った油揚を食べ、米沢に戻ってばったり死んだという。お久の方はこれを城内の福徳稲荷に合祀したと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
米沢市史 民俗編――伝説(米沢市(編)・米沢市史)
『米沢市史 民俗編――伝説』は、米沢市が編んだ市史の民俗編から、第八章「口承文芸」第三節「伝説」を収めたものである。狐・河童・蛇にまつわる話、上杉家の家臣や弘法大師・源義経にちなむ話、沢・池・岩の由来、地蔵や不動尊の霊験、温泉の開湯譚、長者屋敷など、米沢とその周辺に伝わる伝説を一話ずつ短くまとめて載せる。全体を「鳥獣・草木」「人霊」「山・川・湖沼」「地蔵・社寺」「温泉・町・村」の五項に分け、遠山と田沢の七不思議も列挙する。