峠と辻に住む名を持つ化かし狐
どんな伝承か
避暑地になる前の軽井沢では、人を化かす狐は決まった数匹に限られ、めいめいに名が付いていた。三度山の峠にいた丸子のおさんは、通ってくる若い衆を女の姿で誘って女郎買いをさせ、翌朝は説教して帰したという。外国人が訪れるころまで生きていて、電報配達に化けては別荘へ木の葉を投げ込んだ。愛宕山の高瀬沢の九蔵は博徒に化けて賭場をのぞき、負ければ木の葉の小判を置き、勝てば本物を持ち去った。精進場のお北はその九蔵に加勢してサクラを務めた。雲場ヶ池の三蔵は旅人の財布を奪い、離山から発地へ向かう辻のお道は娘の姿で人を惑わせたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
軽井沢町誌 民俗編
『軽井沢町誌 民俗編』は、軽井沢町の町誌の民俗編である。この写しは「不思議な境」と題する部分で、第二節「怪異のフォークロアより」では旧軽井沢の周縁や峠に結びついた名のある狐の話、墓地の跡に建った別荘地の怪談、別荘地で道に迷う話、メディアが広めた怪談を、話者の聞き書きを引きながら論じる。続く第三節「創出された『軽井沢』」は、原野から別荘地として造られた「大自然」を論じる冒頭で切れる。