忠七の妻となって根本が原へ帰った狐
どんな伝承か
『利根川図志』には、信田の森の葛の葉の話とよく似た狐の話が載っている。正直者の農夫忠七が、猟師に撃たれかけた老狐を助けてやった。その後、忠七の前に美しい女が現れて夫婦となり、三人の子をもうけて八年をともに暮らした。ある日、女は自分があのとき助けられた狐だと打ち明け、泣く泣く根本が原へ帰っていった。幼子の母はどこかと問われたら、女化の原で泣き伏していると答えよ、という歌を残したという。子の一人はのちに仙人について学び、関東の孔明と呼ばれた名将栗林義長になったと伝わる。
原典より
正直者の農夫・忠七が猟師から老ギツネを助けてやる。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。