帝が裂いたという奈良田の片葉の芦
どんな伝承か
植物の突然変異や異形に由来を与えて語り伝えた話は全国に多い。片側にしか葉をつけない片葉の芦もその一つで、山梨県の奈良田では、帝が芦の葉の片側を裂いて地に挿したので、以後この地の芦はみな奈良の方角へなびいて生えるようになったと伝えている。同じたぐいの話は各地にあり、新潟の孝順寺では親鸞が焼栗を植えたところ一年に三度実を結んだという三度栗が語られる。逆さ竹や根なし藤、八房梅など、名だけが残って現物はすでに枯れているものも少なくない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。