西平太夫――野荒しの野武士
どんな伝承か
阿波木頭の南宇に伝わる話。榊野氏の先祖にニシダラダユウという者があったという。『木頭の林業』によれば、昔、落武者の類か京人といわれる西平太夫と称する野武士が親子で南宇に来て居を構え、子に弓を持たせて矢を交え、農民を近寄らせなかった。野荒しをして耕作物をみだりに横領し部落民を苦しめたので、部落は談合の上で討伐を決め、各々が竹槍を携えて押し寄せた。豪の者である最手山法師が衆を率いて住宅に攻め入り、太夫は米飯一斗を食い終わるまで待てと乞うたが猶予は与えられず、二、三合打ち合った末、危ういと見た百姓連が竹槍で足を突き倒してようやく討ち取ったという。南宇の榊野家の家宝の古刀がその刀であるといい、のち両郷士は若宮として祀られた。
原典より
南宇の榊野氏の先祖にニシダラダユウという者があった。—— 阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪
『阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪』は、阿波の木頭地方の民俗誌のうち、「八、伝説・妖怪」の節と、阿波の太布を論じた一篇を収めたものである。前半は北川・折宇・蟬谷などの平家落人の話、平家の皿泉、カマ(滝壺)の大蛇、山爺やアセゴノマン、フルソマ、怪火、狐、隣の槙山村の塚の伝説を、『郡誌』の記事と古老の話から述べる。後半は太布に関する文献を挙げ、祖谷と木頭での聞き書きと製品の調査から原料・製法・道具を記す。