別司と泣いて沈んだ釈導寺の鐘
どんな伝承か
椿坂の山の上にはかつて釈導寺という寺があり、黄金を混ぜて鋳た鐘の澄んだ音は遠く浜まで届いたという。ところがこの鐘が鳴ると、凪いだ海も急に荒れて漁ができない。困った漁師たちが代表を立てて頼み込み、寺の堂も鐘もダイノクドンへ下ろすことになった。村人総出で谷や川を越え、その近くで一休みしたとき、鐘は突然林を転げ落ち、河和田じゅうの者が引いても上がらず地中へ沈んでいった。沢の者が一人も来なかったので鐘は「別司、別司」と泣いて沈んだといい、そのため沢の人々は別司へ移されたと伝える。沈んだ穴は今も深く残り、この辺りを鐘ヶ窪と呼ぶ。
原典より
昔、当区の山上にあったと伝えられる釈導寺の鐘は、黄金を混ぜて作ったもので音も非常に美しく、しかも、遠く浜までなり響いたという。—— 鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説(鯖江市(編)・鯖江市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説(鯖江市(編)・鯖江市史)
『鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説』は、福井県鯖江市の市史のうち、史料編第一巻の民俗編にあたる巻である。市内の各町に伝わる伝説を、町名を添えて収め、泰澄・親鸞・弁慶にまつわる木や岩、山姥やてんぐ、たたりのある一本杉、地名の由来を記す古文書の写しなどを載せる。自然物・岩石・動物・家屋敷・城跡・道・橋・寺院・塚墓・人物・事件の項に分け、後半には昔話・笑い話・果なし話と田植え唄などの民謡を置く。