娘の腹を開いた名医と録事尊の縁起
どんな伝承か
『録事尊縁起』によれば、粕尾郷の録事尊は医師中野智元の霊像だという。智元は平治・永暦のころから名医と評判で、遠国からも人が集まった。四十余歳のとき十七歳の一人娘が不治の病にかかり、手を尽くしても効き目がない。娘は治承三年の五月に治療の旅へ出、道端で出会った白髪の翁に教えられ、伊吹山の七つ葉の蓬で灸をすえて全快した。帰った娘に智元は体内を見たいと願い、娘は承知して腹を開かれる。中から鳥が飛び出して久我の地へ去り、その山を石裂と呼ぶようになった。のち智元は都で後鳥羽院の病を治し、録事法眼の名と粕尾郷を賜ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。