身代わりになった十字名号
どんな伝承か
河和田町の報仏寺は『歎異抄』を編んだ唯円の開いた寺と伝わり、十字の名号にまつわる話が残る。唯円は俗名を北条平次郎といい、もとは大変な悪人だった。妻は信心深く稲田の親鸞のもとへ通い、夫のことを嘆いた。親鸞は帰命尽十方無碍光如来の十字の名号を書き与え、夫に隠して大切にせよと諭したという。妻が手箱に隠したそれを平次郎は密夫の手紙と思い込み、妻を斬って竹藪に埋めた。ところが家には妻が出迎えており、藪を掘ると血に染まった名号が出てきた。名号が身代わりになったと知った平次郎は念仏を唱え、稲田を訪ねて弟子となり唯円大徳と名乗ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。