白滝姫と山田奴が残した地名
どんな伝承か
京の公卿の娘白滝姫と、宮仕えの山田奴は歌を交わして心を通わせた。庭を掃く姫が歌をかけ、奴が即座に返したことで二人の仲は父に知られ、姫は家を追われる。奴が姫を背負って故郷へ帰る途中、桐生峠の頂で休むと、彼方に見える山が京の小倉に似ていると姫が言ったので、その山を似田山すなわち仁田山、麓に開けた地を小倉と呼ぶようになったという。二人は今の白滝神社のあたりに住んで睦まじく暮らしたが、やがて姫が世を去り、奴は辞世の歌を残して土地を離れた。それでも二月に一度は必ず墓参し、手のひらに油を注いで大岩の下にいたので、その地を岩本と呼ぶようになったと伝える。
原典より
京都の公卿某の娘白滝姫、山田某なる青年と相愛の仲なりき、或る日姫が庭をはきける時、山田奴通りかかりければ、姫は、「須弥山の山より高く咲く花を 心かけるな 山田やっこ奴」と歌ひかけたり。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。