墓掃除を促しに来た夢枕の老婆
どんな伝承か
桐生町にある千草という料亭は、汚い家ながら客が多く歌妓の出入りも繁く繁昌していた。ある晩、女将が寝ていると白髪の老婆が卒塔婆を持って枕元に立った。翌日、姑にその夢を話すと「それは家の母だ、近ごろ墓の掃除を怠っているから告げに来たのだ、掃除をしてやるがよい」と言う。女将が小僧を連れて慈恩寺の墓地へ行き掃除をして来ると、その晩は平生より多くの客が来た。以来、千草では客が少なくなると祖母の墓を掃除に行かせるようになったという。
原典より
* 位牌と鼠 (273)* じゃれつく犬 (274)* 怪談会の怪異 (275)* お天気祭 (276)* 三千円の借金 (279)* 画家の死 (280)* 二階の怪婆 (280)* 死…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。