滝壺の竜宮から借りた膳椀
どんな伝承か
追貝の星野家の先祖は、片品川の浮島にある観音様の境内を朝晩掃き清め、暇があればそこで釣りをしていた。浮島のところの滝壺は竜宮に通じているといわれ、ある日、釣りをしていると竜宮の乙姫が現れて、入用なら膳椀を貸すから数を紙に書いて滝壺へ流しなさいと告げて姿を消した。人寄せで膳椀が足りなくなった星野家が二十人前と書いて流すと、紙は川下へ行かずに滝壺へ吸い込まれ、翌朝には書いただけの膳椀が岩の上に上がっていた。村では長らく星野家を通じて借りていたが、あるとき一人前を返し忘れ、慌てて岩に置いても受け取ってもらえず、以後は紙を流しても川下へ流れるばかりで貸してもらえなくなったという。
原典より
<柳田 「膳椀淵」「 貸淵」「 貸岩」・高木 「御椀塚」>追貝(利根郡利根村)の星野元一家の先祖は、浮島(利根川の支流片品川にあり)の観音様の境内の掃除を朝晩していた。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。