瓦の荷で築かれた千駄塚
どんな伝承か
今の間々田のあたりに牧の長者という大金持がいて、朝になると絵の鶏が鳴く掛軸を自慢にしていた。ある年、奥州から馬に荷を積んだ商人が来て泊まり、絵の鶏が鳴くはずがない、鳴いたら荷を全部やると賭けた。翌朝、鶏は鳴き、荷は長者のものになった。悔しがった商人は翌年また千駄の荷を持って来て今度は鳴かないほうに賭け、夜更けに鶏の喉へ木綿針を刺しておいた。鶏は鳴かず、商人は前の荷を取り戻し、新しい荷を預けて鎌倉へ去る。長者が待ち構えても商人は二度と現れず、預かった荷を解くとみな瓦のかけらだった。その荷で築いたのが千駄塚だという。長者は財産を浅間山へ埋め歌を残したが、掘っても何も出なかった。
原典より
<柳田——「朝日長者」「千駄塚」>○伝承地 栃木県小山市旧間々田町 昔、今の間々田へんに牧の長者の大金持がいた。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。