鹿の角に託された娘と三つの試み
どんな伝承か
深山の奥で女児を産んだ女房が、産後の病で死ぬと悟り、通りかかった鹿の角に赤子を結びつけて放し、自らは息絶えた。鹿はある山里の子のない爺婆のもとへ行き、二人は赤子を拾って育て、鹿が連れて来たので鹿娘と名づけた。美しく育った鹿娘は、爺婆の死後に里へ下りて長者の家の竈の火焚き女となり、その家の息子は鹿娘を見初めて病みついた。娘に因縁のある老婆が現れ、雀のとまったままの梅の枝を折ること、引き綿の上を新しい草履で絡ませずに渡ること、水面を渡ることの三つを成し遂げた娘を花嫁にすれば病は治ると告げた。村々から集まった娘たちは一つもできなかったが、最後に鹿娘がすべてを果たし、長者の花嫁となったという。
原典より
鹿が連れて来たから鹿娘(或は鹿姫)と名をつけた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。