嫁おどし谷に残る鬼女の面
どんな伝承か
越前の国のある村に与惣治という貧しい百姓がいて、妻とともに吉崎御坊へ通って蓮如の教化を喜んでいた。同居の老母は邪見な性質で、家業を疎かにして参るのだと二人を罵った。与惣治は、早く起きて家業に励み、その合間に法座へ連なるのが当流の信心だと説いたが、老母はかえって計略を巡らせた。文明四年二月二十日の夜、妻が一人で吉崎から帰る道を狙い、産土神の社の鬼女の面を顔に当て、髪を振り乱し白帷子をかぶって藪に潜む。衣が茨に掛かるうちに妻は走り去り、腹立ちまぎれに面を外そうとすると、耳も鼻も肉に食い込んで離れなくなった。駆けつけた夫婦に諭されて念仏を唱えると面は落ち、三人は吉崎で蓮如に謁して御文を賜ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第6巻』所収の「文化叙事伝説」全44話(福井・富山・石川=北陸)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。