田植え唄が結んだ利常の生母
どんな伝承か
おりんという娘がオキダで田植えをし、草を取りながら歌をうたっていた。その声が通りかかった殿様、前田利家の耳にとまって召され、やがて子を授かった。子が三つになった年、おりんはその子を連れて加賀の前田家の城へ向かったが、途中で腹を病み、滝谷の妙成寺の門前で臥せっていた。朝、和尚が事情を聞いて三十日ものあいだ介抱してくれたという。城へ着いてその話をすると、利家は礼として滝谷の塔を建てさせた。大広間に人が居並ぶなか、おりんが手を離すと、子はまっすぐ殿様の膝へ上がってにっこり笑った。これこそわしの子だと言われ、その子が三代の利常であると伝える。
原典より
おりんという人はオキダにおって田植えをしとったと。—— 日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。