雲に乗って鐘を提げ去った異人
どんな伝承か
原谷村長福寺の鐘は、今は大和金峰山上に懸かる。銘に「遠江国佐野郡原田郷長福寺鐘天慶七年六月二日」と刻む。寺伝によれば、昔、一人の異人が来て宿を求め、住持と法義を論じたうえで鐘楼の洪鐘を得たいと言った。住持が戯れに承知すると、異人はたちまち起って洪鐘を提げ、雲に乗って飛び去ったという。異人と鐘を賭けて碁を囲み、異人が勝って鐘を提げ去ったともいう。異人は役小角だったとも天狗だったともいい、そのため長福寺境内に行者堂を建てて役小角を祀ると伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。