草原で舞を教えた柿野の幸作
どんな伝承か
八、九十年ほど前の話という。柿野の仲屋に幸作という人があり、若い頃は組頭も務めた。ある冬、明神山に近い山へ薪を切りに行き、一服しながら木の切り株を太鼓代わりに花祭りの拍子を取っていると、背の高い、顔の赤い鼻の高い男が傍らに立っていた。教えてくれと乞われ、目をつぶれと言われるままにしていると、体に触れるものもないまま風だけを感じて運ばれ、見たこともない広い草原に着いた。同じような者が数人おり、舞を教えて自分も夢中で舞った。帰りたいと言うと再び目を閉じさせられ、気づくと家の西の薪置場に、大きな切り株を背負って倒れていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。