神明社の松に住みついた乱暴な天狗
どんな伝承か
名古屋市中川区富田町の昔話。神明社の松のてっぺんに天狗が住んでいて、村へ下りてくると畑のスイカやキュウリ、鶏の卵を食べ、池の魚まで持って行った。体が大きく力が強いので村人にはどうにもならず、「天狗が来るぞう」と聞くと皆家の中へ逃げ込んだ。天狗は両手で抱えるほどの大石を片手でつかんで、めくらめっぽうに投げ、田畑は石や瓦で荒れて作物が台なしになった。村人は雨戸の隙間から「早くお社へ帰ってくれ」と震え声でつぶやくばかりで、夜には松のてっぺんから太い笑い声が響いた。大正十年の大風で松の木が倒れてからは、天狗の姿は少しも見えなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。