神隠しに遭った高岩院の小僧
どんな伝承か
奈古谷の高岩院の住職石井一兆は、万延元年三月、まだ小僧だったころ国清寺に泊まった。夜中に起きたところ暗がりから何者かに捕らえられ、目をつぶれと言われるまま身を任せると、大きな羽音がして見も知らぬ野原に下ろされていた。あたりは声ばかりで人影がなく、天狗の仲間になれと迫られたが、いやだと答えた。寺では神隠しと騒いで方々を捜し、末寺五十八か寺の僧を集めて読経したところ、三日目の真夜中に釈迦堂の棟から帰りを告げる声がした。人々が出てみると、棟にまたがって震えていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。