釜で煮られた山姥と赤い蕎麦の根
どんな伝承か
秋の日が暮れかかるころ、馬の背に晩のおかずのサンマを積んだ馬方が山のそばを通りかかると、背丈一丈もある山姥が針金のような白髪を西日に輝かせながら現れ、道をふさいだ。皺だらけの顔で目はつり上がり、口は耳まで裂けたその形相に馬方は肝を潰し、サンマも馬も食い尽くす山姥から一目散に逃げ出した。逃げ込んだ一軒家で焼き餅と甘酒を食べて眠りについたところ、夜更けにその家の主として戻ってきたのは、なんと先ほどの山姥自身だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。